医療ツーリズムを受け入れる国と、そこへ訪問する国には特徴があると示唆されています。重松氏は受け入れ側(提供側)は中進・新興発展国であるのに対し、訪問する側(受診側)は受療分野により異なるが先進諸国・地域の人が多いとしています。
ブログをご覧いただきありがとうございます。心行政書士事務所の二藤です。
年末も差し迫り、そろそろ新年の準備もはじめる頃となりましたね。
そしてお正月を海外で過ごす方もいらっしゃるかと思います。どうぞお気をつけてお出かけください。
さて、医療×旅の許認可学の2回目は、医療ツーリズムの受入国と受診者(受診国)の特徴について示唆する論文をご紹介したいと思います。
重松氏はその特徴について次のように示しています。
2008 年の時点では,インドを筆頭に,シンガポール,タイ,マレーシア,台湾,韓国などアジアの新興発展国,あるいは,メキシコ,コスタリカ,ブラジル,南アフリカなどの南米・アフリカ諸国,そして先進国であるアメリカ,ドイツさらには日本など,世界 50 カ国・地域が参与している.特筆すべきは,アジアの中進国・新興諸国が積極的に市場を開拓していることである.
引用の年代が古いものとなってしまいましたが、いわゆる中進・新興国の名前があがっており、実際にこの分野の情報を縦覧した際にはこれらの国の名前を見かける機会が多い印象があります。
また、受診者の国籍については、
受療分野によっても当然異なるのだが,全般的には先進諸国・地域の人々である.実際,MT の顧客は,2008 年の時点では,世界全域でクライアント総数は推計 600 万人であるが,彼らは主として先進諸国の人々であり,そのうちアメリカが50 万人強,イギリスが 7 万 5 千人,オーストラリア,日本などであり,そのほかに中国やロシア,中東地域の富裕層が少数ながら含まれている.
と述べています。
引用)重松伸司:アジアにおけるメディカル・ツーリズム「国際移動」の新動態,医療観光の現状と課題。オーストラリア研究紀要37:29-43,2011
ただし辻本氏は、「先進国→中進・新興国」という構図だけに留まらず、「中進→先進」「先進→先進」「中進→中進」という多様なパターンが技術・地理・費用などの要素によって存在する事を示唆しています。
参考)辻本千春:アジアのメディカル・ツーリズムの勃興についての考察~メディカル・ツーリズムの分類論~。第2回 観光・余暇関係諸学会共同大会 学術論文集:41-48,2010
また、日本政策投資銀行によれば、
以前の医療ツーリズムは新興国から先進国への渡航が主流であったが、現在は先進国から新興国へ向かう新たな流れが加わっている。
と示しており、従前の構図が変化し、現在はそれが変化したことを示唆していました。
引用)株式会社日本政策投資銀行:進む医療の国際化~医療ツーリズムの動向~。今月のトピックス147-1:2010
日本が今後どのようなパターンを想定して医療ツーリズムの方向性を形作っていくかが一つのポイントになると考えます。
例えば、千葉の鴨川エリアでは、亀田総合病院を中心として予防医療を中心とした医療ツーリズム地域としての振興をはかっています。
来訪者の医療ニーズ・特性・支出可能な予算などと同時に、実施地域や医療機関の特性を勘案し戦略を立てることが重要であると考えます。
あわせて、地域に暮らす人の医療の確保も含めて、地域のみならず日本全体での医療制度という視点を持ちながら、導入に向けた検討を行う必要があるでしょう。
各国の経済の発展などにより、引用した文献の時代よりも状況は更に変化しつつあることは各種の経済指数などからも明らかですので、今後も引き続き新しい情報の収集に努め、お客様に有益な情報を提供できるよう努めてまいります。
本日もご覧いただき、ありがとうございました。
Comments